科学と理論と計算で自作ラーメンを創る男が、山形のラーメンをさらにアツくする。

2023年12月号(230号)
特集|とことん、極め人。
わたふらいさん、丸松物産(上山市)

知的探求心に突き動かされ、自家用製麺機をゲット。ラーメン沼にハマる

「きっかけは単純に興味ですよね。食に対する知的探求心というか。食品開発にかかわる仕事に従事していたことに加えて趣味で食べ歩きを重ねているうちに、なんとなく入っている食材については分かるようになっていましたから、自分が築いてきた理論と知識に基づいて、どうやったら同じ味を作れるのかなと研究し始めて。年代物の製麺機を中古品で手に入れてからというものオリジナルラーメンの創作が一気に加速しました。気がついたら1年で200種類以上のラーメンを作っていたんですよ。最初の1、2年くらいは2日に1回のペースで」

本業ではメンマでお馴染みの「丸松物産」(山形工場)で商品開発室に所属。また個人の活動として商品開発や監修、プロデュースといったラーメン店や飲食店へのサポートも行っている。
自作ラーメンをつくるひとつのきっかけになった年代物の製麺機。

そう話すのは自作ラーメンクリエイターのわたふらいさん。食べ歩きが好きで始めたブログでのラーメンに対する的確な食レポが話題となり、現在は自作ラーメンクリエイターとしてラーメンイベントを主催し注目を集めるなど、各メディアにひっぱりだこの“時の人”だ。大学卒業後に県内の大手食品メーカーに勤務。とくに製麺技術に関する専門知識を武器に発信していたが、今年に入って「よりラーメン業界に貢献したい」との思いから、メンマで知られる『丸松物産』へ転職した経歴を持つ。

小さなサイズにメンマやザーサイがぎっしりと詰まった豆缶は『丸松物産』の人気商品だ。
メンマと惣菜のパイオニアである『丸松物産』の社員として勤務するわたふらいさん。ちなみに、ラーメンの上に載せた麻竹(マチク)で「メンマ」と名付けたのが、同社の前会長(故・松村秋水氏)だ。

「わたふらい」オリジナルラーメンの一例

米沢ラーメン風中華そば

特有のピロピロ麺が特徴の山形県米沢市のご当地ラーメンで、置賜地域の某有名店にインスピレーションを受けて作った一杯。米沢ラーメンのスープは煮干しと香味野菜がポイントで、あっさり動物魚介スープにピロピロ細縮れ麺が特徴的。

画像提供:わたふらい

山形牛煮干しそば、すき焼き風山形牛脂ごはん

世界初、山形牛×煮干しというラーメン界の夢のコラボとも言えるラーメン。牛脂ごはん共に第4回麺屋わたふらいで登場したメニュー。

画像提供:わたふらい

山形風煮干しラーメンスープ、特注ラーメン

山形市宮町の老舗製麺所である酒井製麺所とタッグを組んで発売している人気商品。自宅でアノ味が食べられると評判に。酒井製麺所の直売所『めん工房さかい』で購入可能。

画像提供:わたふらい

地域色が色濃く現れる食文化だから山形のラーメンは面白い

現在はメンマや調理食品の商品開発を本業として行いながら、自宅でも麺打ちやスープ作りの研究を積み重ねており、その豊富な知識・経験・味覚を活かし、個人の活動として商品開発や監修等を通じて、ラーメン店や飲食店をサポート。プロデュース業をはじめ自作ラーメンの試食販売イベント開催も続けている。そうしたわたふらいさんの熱意と確かな舌に信頼を寄せているのが上山市のラーメン店『らぁ麺ひでよし』のご主人、カノユウさんだ。「自分の理想とするラーメンのために伴走してくれる人、一緒に更なる高みを目指せる人に出会えた」とカノユウさんは語る。「初めは本業、メンマについての相談を受けて。十分においしいラーメンを出されているにも関わらず、看板商品のから味噌らぁめんへ注ぐ熱意に共鳴しました」とわたふらいさん。

「ラーメン熱で意気投合」した2人。カノユウさん(右)との意見交換は次第に熱を帯び、ラーメン談義は止まらなかった。
秒単位で正確に調整するカノユウさんの麺茹で。上山市十日町に今年4月に開店したばかりだが、すでに人気店に。
『らぁ麺ひでよし』のから味噌らぁめん880円。箸を入れた瞬間に香り立つ濃厚かつ旨味が引き立つ一杯。

これまで作ったラーメンの種類は400種類、杯数でいうと1000杯以上になります。始めた頃はイメージと完成したものにズレがありましたけど、いまは作る前にだいたいのレシピは思い描けるようになりました」と話すわたふらいさん。最後に夢を尋ねると「ラーメンという食文化を通じて山形を盛り上げていくこと」との言葉が。根底に流れる“郷土愛”が、極め人を突き動かしている原動力のようだ。

わたふらいSNS
Instagram @watafly0813
X @wata0813

カノユウさんと協同で試行錯誤して仕上げた味噌らぁめんを食す、わたふらいさん。
味噌らぁめんをひと口。「ドンと真ん中を突いた、マトが外れていない味に仕上がってきています」と口を揃える、カノユウさんとわたふらいさん。

極め人「わたふらい」解析

きっかけは?

子どもの頃から料理することや食べ歩きが好きで、食べ歩いたラーメンの感想をブログに載せていた。コロナ禍をきっかけに製麺機を購入し、本格的に自作ラーメン沼にハマっていく。

実績

本業でメンマや調理食品の開発を担当する傍ら「麺屋わたふらい」として定期的にラーメンイベントを開催。イベント情報は氏のSNSにて。

2023年10月に行われた自作ラーメンのイベント「第4回 麺屋わたふらい」でのひとコマ。

相棒

相棒は私物である年代物の製麺機。インターネットで購入した中古品だが、自身でペイントやメンテナンスをしているうちにますます愛着が増していったという。これを手にしたことでラーメンづくりへの情熱が本気度を増した。

田中機械製作所の田中式製麺機。このような小型の家庭用製麺機は戦後の日本で一気に普及した。

gatta! 2023年12月号
特集|とことん、極め人。

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