山形で感じる鬼の気配。風習の鬼「其の弐・鬼やらい」

2023年3月号(221号)
特集|鬼さん、こちら
鈴立山 若松寺(天童市)

人の心に棲む鬼を改心させる、奈良時代から続く儀式

最上三十三観音第1番札所であり、良縁成就のパワースポットとして知られる『若松観音』で、毎年旧七草の日に開かれるのが奈良時代から1300年以上続く儀式「修正会(しゅうしょうえ)」、別名「鬼やらい」だ。観音堂に集まった氏家栄脩(えいしゅう)住職らが無病息災、家内安全、交通安全、身体堅固、良縁成就などを祈念しながら読経を行うなか、参拝者は寺に伝わる木製の宝印「牛王(ごおう)加持印」を額に押し当ててもらう。印には、安土桃山時代の文禄3年(1594年)7月の銘が刻まれており、山形城主・最上義光が再建改修した頃からじつに420年以上、延べ数万の人々の平癒を祈願してきた印なのだ。

また、全国に伝わる「鬼やらい」は悪鬼=疫病を追い払う儀式だが、『若松観音』の場合は、鬼たち(参拝者)を集め観世音菩薩の前で懺悔させ、良い鬼に改心させる儀式とされている。氏家住職は「頭に印を押すことで、観音さまが罪を受け止めた証しになる。これまでの行いを反省し穢れを払って、心新たに一年を過ごしていただきたい」と話していた。

縁結び、むかさり絵馬、若松観音、縁結び絵馬など縁結びの観音様として有名な若松寺。儀式は国指定文化財である観音堂で行われる。
観音堂に行列をなして入堂する住職と僧侶たち。
コロナ禍の影響で3年ぶりに地元の参拝者を交えて行われた令和5年の「鬼やらい」
握手すると良縁に恵まれると話題の住職 氏家栄脩さん。
儀式の由来や心得などを説法する若松寺の氏家住職。
寒風が吹き込むなか、僧侶8人がおよそ1時間にわたって経を読み上げた。
読経の後、太鼓の合図とともに参拝者が一斉に結界の縄に駆け寄って火伏せの幣をいただく。
読経の後に参拝者へ授けられる御守り。
420年以上にわたり受け継がれてきた「牛王(ごおう)加持印」と呼ばれる木製の印。
牛王加持印を額に押し当ててもらうと、煩悩や体の不調がなくなるとされている。

gatta! 2023年3月号
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