珍しい地蔵様を愛で、温泉、ラーメン、名物土産まで。3時間があっという間の最上駅エリア。

2023年10月号(228号)
特集|ローカル駅おさんぽ旅
JR陸羽東線(最上町)

●JR陸羽東線 最上駅
最上郡最上町大字向町
開業:1916年(大正5)
総延長距離:94.1km
起点/小牛田駅 終点/新庄駅
駅数:27

最上町の成り立ち

国時代末期に最上義光が攻め入り、本城地区(最上町)を家臣・小国日向守光基が治めた。明治〜昭和初期は馬産で栄えた。昭和29年旧小国村と旧西小国村が合併し最上町が誕生。

陸羽東線の愛称は奥の細道湯けむりライン

JR新庄駅を出発し、最上小国川を眺めながら山あいを40分ほど走る電車旅。途中、瀬見温泉や大堀温泉を通り過ぎ、赤倉温泉の2つ手前となるのが最上駅だ。国道47号と並走する路線は、ゆけむり号よろしく歴史ある温泉街やのどかな田畑、住宅など、人々の暮らしを間近に感じながら走る。駅に近づくにつれドラッグストアやホームセンターなどが現れ、山形県側の陸羽東線にとって中心を担う駅という風情が色濃く漂ってくる。駅舎には公民館が併設されており、コンクリート2階建ての現代的な造り。駅前には地元スーパーや飲食店、銀行などが立ち並んでいる。

1日の平均乗車人員※は97人。通勤通学の時間帯を中心に上下線それぞれ1日8本運行。週末や休日には新庄ー仙台間を快速ゆけむり号が走る。※JR東日本発表(2022年度)
最上駅の駅舎。2階には線路や街並みを展望できるロビーもある。
最上駅の駅舎入口で荷物をまとめる人々。
駅正面に広がる町の商店街。駅からまっすぐ北進すると最上町役場がある。駅裏には国道47号線があり、暮らしを支える商業施設も。

滞在時間はおよそ3時間歩いて、浸って、食べる旅

降り立って最初に向かうのは、町内本城の踏切傍にある『草餅地蔵』。徒歩で約20分の距離だが、小柄な女性ほどのお地蔵さまが祀られている。来た道を国道47号方面へ戻り『九代目九五郎秘伝みそ』の直売店へ立ち寄る。木樽で寝かせて仕込まれた自家製みそは旅の手みやげに。さらに駅方面へ戻る途中に立ち寄りたいのが『ウエルネスプラザ最上ヘルス温泉』。入浴料310円で誰でも気軽に温泉に入ることができる。汗を流した後は駅前の『繁昌軒』でお腹を満たそう。最後は最上町名物の「くじら餅」を『佐藤菓子店』で、地元で人気の『大谷菓子店』ではバナナボートをゲット。帰りの電車内でゆっくりスイーツタイムを愉しもう。

編集員が巡った最上駅エリア

好物から名前がついたいたずら好きの地蔵様「草餅地蔵」

昔この地区で飢餓が続いた際に祀られたと伝わる。またこの地蔵様の真の姿は山の神であり、時々娘の姿に化けて夜遊びに出歩くのだとも。そんな地蔵様の好物にちなみ名前がついた(最上町大字本城の鉄道踏切前)

微笑を浮かべたような表情の「草餅地蔵」
本城の鉄道踏切のすぐ目の前に御堂が。山形十三佛地蔵菩薩霊場の札所である「見性寺」が管理しているようだ。

長年地元で愛され続ける美味しいみそを持ち帰ろう「九代目 久五郎みそ」

草餅地蔵への道すがらにある、300年以上続く手づくりみそ工房。在来品種の大豆を主原料に、添加物を使わず自家産米麹と塩だけで仕込むという(最上町大字本城461 TEL0233-43-3914 不定休)

丸太の看板と味噌の熟成と貯蔵をするサイロが、どこか牧歌的な佇まいの「久五郎みそ」
製造場には直販店舗があり、入口には五風十雨(ごふうじゅうう)の看板が。五日目ごとに風が吹き、十日目ごとに雨が降るという農作に都合のよい気候風土であるという当地の自然を讃えている。
原料は豆と麹と塩のみ。最上伝承野菜に認定されている「久五郎豆」を使用した手作りみそ。
同店では最上町の特産品である「トルコぎきょう」の栽培・販売もされていた。

何を食べようか迷ったら地元の推し麺〝繁もや〟の「繁昌軒」

並々とあんかけの野菜炒めが乗った「もやしラーメン(通称:繁もや)」700円が推し。丼や定食、そばうどんなどメニューが豊富で、地元の人々の胃袋を支える人気店(最上町向町564 TEL0233-43-2021 11:00〜19:00 不定休)

シャキシャキとした食感の野菜と、ごま油がほんのり香る醤油あんで人気の「もやしラーメン(繁もや)」
麺類から丼、定食まで幅広いメニューで親しまれる町の食堂だ。

最上地方に伝わる懐かしの味「くじら餅」が看板商品の「佐藤菓子店」

最上名物「くじら餅」を製造販売する店。“久しく持ちの良い餅”という意味の“九持良”が語源。写真はこしあんに刻み栗入りの「もがみまんじゅう」80円(最上町向町619-2 TEL0233-43-2370 7:30〜18:30 火曜定休)

「くじら餅」は、久しく持ちの良い餅という意味で「久持良餅」と書く。干ばつや洪水による凶作や、相次ぐ戦乱による食糧難を乗り越えるための保存食として始まったとも言われている。
「もがみまんじゅう」のほか、「笹餅(いが餅)」や「粒あんどら焼き」も定番商品だ。
 商店街のなかでもひときわ目をひく黄色い外観。

ノスタルジックな愛らしい佇まいのケーキ屋さん「大谷菓子店」

創業80年以上、地元で愛されている和洋菓子店。人気はバナナボートやショートケーキ、チーズケーキなどで、ほとんどの商品が200円台と良心的(最上町向町550-1 TEL0233-43-2130 7:30〜18:30 元旦休)

左から人気の「バナナボート」「ケークヘーゼン」「オレンジムース」。ほのかな甘さとふんわりと溶けるような食感。
2016年に一部改装された店内だが、ガラスの照明や造作壁面など、昭和の頃のレトロフューチャーな雰囲気を留めていた。

黒沢地区で祀られる神様『大天馬様』

町内黒沢地区県道63号沿いにある『黒沢神社』。ここには頭が竜で身体は馬、背中に鷲の翼を持っている大天馬様が祀られている。馬を守る神、安産の神として信仰を集めている。

地域の氏神『大天馬様』の本堂。最上郡鮭川村にも「大天馬様」を祀る神社(田中神社)がある。
神使は蛙(ビッキ)であり、祭礼の日には必ず雨が降るとされる。

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