山形とうさぎの接点を探し、機運を一気に高める年に。

2023年2月号(220号)
特集|或る、うさぎ伝
月山・蔵王の民話、兎のことわざ

跳ねる=飛躍、子沢山=栄える、月の住人=運気が上がる卯年の幕開けに際し、2023年最初のガッタは県内あちこちで〝うさぎ〟探し。

世界中で愛されているうさぎ、山形にも

長い耳、面長かつクリクリの目、ふさふさの毛並み、小さな体躯で元気に跳ねる姿から、日本のみならず世界中で愛されているうさぎ。ピーターラビットやミッフィー、ロジャー・ラビット、オズワルド、さらにはマイメロディやマイナちゃんなど、うさぎがモデルとなっているキャラクターの数をあげたらキリがないほど。それだけ万人に受け入れやすい存在、親しまれている証拠だろう。近年のコロナ禍では、性格が穏やかで比較的世話がしやすいという理由から、ペットとして家族に迎え入れる人々が増えたとも聞く。

そこで卯年を記念して、うさぎと山形との接点について探ってみたら、宝とも言うべき史実や伝承など、想像以上にたくさんの収穫があった。それを新しい年の一番にお届けし、機運の盛り上げに貢献できればと願う。

干支は本来、十干と十二支の組み合わせで表される。甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の太陽を象徴とした生命の循環を十干で、子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の月を象徴とした生命の循環を十二支で示し、その組み合わせが60通りあって一巡となる。癸卯とは「寒気が緩み、萌芽を促す時期」とのこと。そんな萌芽の兆しを、うさぎとともに探してみよう。

卯の向かい干支は酉。向かい干支を大切にすると幸福が訪れると言われ、衣類の内側に向かい干支をあしらう風習があったとか。(画像:福岡県福岡市にある櫛田神社の楼門天井に吊るされた干支恵方盤)

兎がふくまれることわざ

ここでは兎がふくまれるものをいくつか挙げてみた。ほかにも兎をはじめ動物に由来することわざは数多い。日本語の面白さと奥行きを「動物+ことわざ」の観点で掘りさげてみるのもいいだろう。

うさぎに祭文

祭文とは、祭りの際に神に捧げる祝詞のことで、それらをうさぎに聞かせても理解することが難しいことから、何の反応もなく意味のないことを例える言葉として使われる。

うさぎの登り坂

うさぎは前足よりも後ろ足が長いため、登り坂を走るのが得意な動物。物事が良い条件に恵まれて、スムーズに進むことを表現している。

うさぎの耳

大きな耳を持ち、聴覚の優れたうさぎにちなんだことわざで、人の知らない事件や噂などをよく聞き出してくる人や事柄を例えてそう呼ぶ。地獄耳の別称とも。

うさぎの角、亀の毛

うさぎに角がないように、まさにありえないことを表現する言葉。亀の甲羅に毛が生えることもないので、「兎角亀毛」と四文字熟語で表現されることも。

波兎

縁起物の図柄として古くから親しまれている。兎は多産なことから子孫繁栄や豊穣をもたらし、波を飛び回る様は飛躍を表している。また波は火除けの守りとも。

脱兎の勢い

ただでさえ足の速いうさぎが、嫌なことから逃げる際にはさらに素早く走る様を表している。とても速いことの例え。

山形で語り継がれる民話にも、うさぎがたくさん登場しています

口伝えで残されてきた山形の昔話のなかに、うさぎが登場する話がいくつか残されている。話が紡がれた時代のうさぎは、いまよりもっと人々の身近に存在した動物であったのだろう。そのなかから月山や蔵王といった、私たちにも馴染み深い土地を舞台に展開する話をふたつ紹介。スペースの都合でそれぞれ一節のみの紹介になるが、機会があれば収録された本やCDをご一読・一聴いただきたい。

※参考資料/「おらほの昔あったけど」編集/長南一美(発行/松風園)、ゆきんこ民話CD「むか〜し昔あったけど〜語り継ぐ郷土の言葉」(制作/東神文化企画)。すべて山形県立図書館所蔵

やまがた うさぎものがたり

「蔵王の月と兎」

蔵王の山に、お猿さんと狐さんと兎さんが仲良く暮らしていました。ある日、今にも倒れそうなおじいさんが3匹の前に現れました。おじいさんがお腹が空いたといえば、猿さんは木に登って木の実を採ってあげ、狐さんは川で魚を採ってあげました。〈中略〉兎さんは2匹にお願いして、火を焚いてもらうと、「自分を食べてください」と言って火の中に飛び込んでしまいました。〈中略〉兎はおじいさんの腕の中で生き返りました。おじいさんは実は神様だったのです。心優しい兎は、神様と月の宮殿に住むことになったのでした。

このほか「蔵王の蝶」、「宝のふくべ」、「蔵王の山鬼」、「お山の巨石地蔵さん」、「天狗の生き針」、「炭焼藤太」など、蔵王近辺にはいくつもの民話や伝説が残っている。

蔵王の樹氷原からの山形県内内陸部の眺望と夕暮れ

やまがた うさぎものがたり

「うさぎときじの月山参り」

昔瀬場の山さ、物知りうさぎときじがいっだけど。〈中略〉「うさぎや、なして月山を月の山と言うんだ」「昔よりまだ大昔、お月さんのかけらがここさ落ちてきて、出来た山が月の山だ」〈中略〉「んだば、お月さんで餅をついているうさぎの仲間は、月のかけらが落ちてくるとき、着いてこねだが」て、きじが聞いだけど。「きじ、いいこと聞くのぉ。月のかけらが落ちてくるとき、一緒に落ちてきたうさぎが俺の祖先だ。きじの祖先は誰だ」「俺の祖先は、桃太郎が、鬼が島さ、鬼退治に行くとき、お供して鬼退治したきじが祖先だ」

互いの素性を打ち明けたうさぎときじが仲良くなり、名所を見物しながら月山参りをする昔話。古くから信仰の対象として存在していたことが伺える。

gatta! 2023年2月号
特集|或る、うさぎ伝。

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