滋味深きその唄たちは、先人を労わり愉しませてきた

2025年4月号(246号)
特集|民衆の謡
山形市、東京都ほか

その土地で口承によって歌い継がれてきた民謡〈うた〉。祝い唄、祭り唄、仕事唄、それらは人々の暮らしのなかから生まれ受け継がれてきた山形で愛され、ここにしかない旋律についてじっくりと紐解いていく。

今号では日本民謡を愛する2人組DJユニット『俚謡山脈』にご登場いただいた。

その土地の人々を支えた民の謡〈うた〉という存在

「民謡」という言葉が一般的になったのは、明治時代の半ば頃、小説家であり翻訳家でもあった森鴎外らによって使われはじめたのが最初だという。その概念はドイツで誕生し、Volks(民衆の)とLied(歌)という言葉が合成された「Volkslied(民衆の)」と総称され、またはそれを英語に訳した「Folk song※1」の訳語として、日本語では「民謡」と訳され定着したようだ。それまで国内では各地域や時代によって里謡や俚謡などと呼ばれていたそう。

民衆の間で自然発生的に生まれ、作者が不明なものも数多く存在。口承がゆえにまた何者かによって他所へ伝播し、編曲されることもしばしば。

戦前戦後のブームを経て近代的アプローチも

そのように少しずつその土地の独特の歌唱表現や節回し、方言などが合わさり、滋味深さを増したものが民謡である。正直なところ現代音楽に耳慣れしている我々にとっては、一度耳にしただけでは難解に感じるものもある。しかし不思議なことに聴くほどに肌に馴染むような、つい手拍子を刻みたくなるような、歌の情景が思い浮かぶような感覚にもなってくる。民謡について知ることは、かつての先人たちの暮らしぶりや想いに触れる機会でもある。とくに山形では数多くの民謡が唄い継がれており、このページで唄の一節と由来について紹介している10曲すべてが山形県発祥のもの。これはほんのごく一部だ。

民謡は戦前戦後、幾度かブームと呼ばれた時代を経て、近年ではポピュラー音楽の担い手やクラブDJとのコラボレーションが実現したり、また新たな息吹を感じる動きもあるようだ。篤い民謡家たちが口承で繋いできた民の謡、山形の唄を、ガッタ的視点で取材してみた。

※1 フォークソング。民衆のなかから生まれた民謡や民族音楽に根ざしたものと、そこから派生したポビュラー音楽も指す用語。

参考資料/「山形民謡ー付全国主なる民謡」(加藤桃菊・著、昭和37年初版、日本民謡桃菊会・発行)、「山形民謡の由来考」(髙橋兼一・著、平成21年初版)

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