2024年5月号(235号)
特集|令和の時代のナイスなお酒
國井酒店 國井功一さん(山形市)
食の宝庫と言われる山形だが、農産物や郷土料理に限らず、日本酒やワインも県内外の通たちを唸らせ続けている。近年、動向が変わりつつある山形のお酒を見つめ直す。
飲み手の好みが多様に変化
国税庁が公表している、昭和から令和にかけての「酒類課税数量の推移」を見ると、1993(平成5)年度を境にビールの課税数量が大きく減少していることが分かる。これはビールから低価格の発泡酒や第3のビールに消費が移行したことも一因ではあるが、一方で日本酒に代表される清酒の減少幅は比較的緩やかで、ワインなどの果実酒は横ばい、ウイスキーやブランデーは増加傾向にある。また、ビールについても最近ではクラフトビールの台頭で選択肢も増えており、飲み手の好みが多様になっていると言えるのではないだろうか。
多種多様なお酒が山形から全国へ
近年山形では、以前から酒造メーカーが多かった日本酒やワインに限らず、クラフトビールやウイスキーなど、新たなお酒の登場が目覚ましい。種類豊富になりつつある山形発のお酒が令和時代の新トレンドとなる日も遠くないかもしれない。
この10年で山形のお酒はどう変わりましたか?
山形の地酒専門店として、日本酒を中心にワインや地ビールなどを取り扱う山形市東原町の國井酒店。代表の國井さんは「長年、県外の日本酒を扱わずに、地元の酒だけで商売ができているというのは、それだけ山形のレベルが高いということ」と笑顔で話す。一方で、「近年、酒蔵の動きも消費者の動向も変化してきている」とも続ける。以前は、日本酒を飲む人は、一年を通して同じ銘柄を飲むケースが多かったというが、最近は季節によって変える人が多いそう。「しぼりたてとか、ひやおろしとか、旬の日本酒を求める人が増えています」と國井さん。酒蔵が販売する商品も細分化されているという。また、違う銘柄の四合瓶を2本購入するなど、いろいろな味を楽しみたいという人が増えているようだ。
この10年で山形のお酒はどう変わりましたか?
國井さんが店を継いだのは平成元年。当時は、県内酒蔵の一部が首都圏で知られていただけで、「山形の日本酒の知名度はまだまだ低かった」と國井さんは振り返る。そこで、「山形の酒はおいしいのだから、県外の方とのパイプ役になりたい」と考え、県内の酒販店では先陣を切る早い時期からインターネットでの販売にも力を入れてきた。二合瓶の山形の地酒5〜6本をセットにした「飲み比べセット」も好評を集めている。また、コロナ禍で飲み会や旅行が制限された時期には、通販で購入する人も増えていたそうだ。
現在では、各メーカーの尽力により、山形の酒はコンテストでも常連になるなど、近年、首都圏でも急速に認知度が上がっている。國井さんは「ブランドが成熟期に入ってきた」とも感じているというが、そのなかで、精力的に展開する酒造メーカーも少なくない。今回の特集では、まだまだ大きなポテンシャルを秘めている山形のお酒たちを紹介していこう。
gatta! 2024年5月号
特集|令和の時代のナイスなお酒
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