再生可能エネルギーによって“暖める”ことの意味と、その方法について考えます。

2023年1月号(219号)
特集|火のある暮らし
蕎麦Café 閑や(大江町)、天童荘(天童市)

火の使用は人間にとってエネルギー革命

私たちの先祖は竪穴式住居の時代から家のなかで火を囲み、暖をとったり、照明や炊事場として囲炉裏の存在を大切に守り継いできた。囲炉裏が家族が集う中心の場所に据えられており、家長や客人などの座る場所も厳格に決められていたことからも、生活における重要な場所であったことが証明されている。

火をコントロールできるかできないかは、人間と他の動物とを区別する上でとても大きな要素であり、まさに人類にとって火との遭遇はエネルギー革命の第一歩。ヨーロッパにおいても日本の囲炉裏によく似た構造の炉から暖炉へと発展し、さらには今回着目した「薪ストーブ」が14世紀後半にフランスで誕生している。暖房器具として飛躍的に普及したのは、アメリカ合衆国で活躍した物理学者ベンジャミン・フランクが鉄製の箱型薪ストーブを開発して以来のこと。日本では幕末の江戸時代がはじまりと言われ、当時はブリキ製のものが主流だったと伝えられている。

火が人と暮らしの中心にある意味がいまこそ見直されている。また、あえて孤独をつくり「囲む火」よりも「向き合う火」によって、己を省みる人も増えている。

なぜ人は火に魅力を感じるのか

例えばキャンドルや蝋燭の炎に癒し効果があるのは、「1/fゆらぎ」と呼ばれる人の心臓の鼓動とリズムが同じであることが理由なのだとか。また燃焼する際にはマイナスイオンが発生し、ストレスや疲労感の軽減に効果があるとも。暖かくて心地良いことだけでなく、音や香りなど五感に作用して、一緒に見ている人同士の会話が弾むことも研究から証明されているのだそう。薪ストーブやペレットストーブの利用は再生エネルギーとしての可能性を広げるだけでなく、人と人とのつながりや心の再生にも期待できる存在なのかもしれない。

『ペレットストーブ』ユーザーの声

天童荘 若女将 伊藤香織さん

季節を感じつつゆったりと炎をながめ暖をとるペレットストーブは、お客様にもお喜びの声をいただいております。広縁に設置しております山本製作所様の「ou」は、山形鋳物や成形合板など職人の手仕事と高いデザイン性にこだわった工芸品のような佇まいで、当荘の雰囲気にも適っていると感じます。

天童荘 若女将 伊藤香織さん

天童温泉にある木造総平屋建て数寄屋造りの宿『天童荘』。静音で柔らかなペレットストーブの暖かさは、二十四節気の繊細な季節感を感じとれるようにという同荘が目指す雰囲気にも合っているという。

『天童荘』の中庭が見える広縁に設置された『山本製作所』による純メイドインヤマガタの「ou(オウ)」

『薪ストーブ』ユーザーの声

蕎麦Café 閑や 店主 小関政弘さん

煉瓦と漆喰に囲まれた店内で十割蕎麦とそばスイーツ、煎れたてコーヒーを味わえる店としてこの秋開店しました。リフォームの最中に提案をいただいて導入を決めましたが、天井が高くてもこれ1台で充分温かい。薪火を眺め温和な空気を感じながら食べる打ちたての蕎麦が、世代を問わず喜ばれています。

蕎麦Café 閑や 店主 小関政弘さん

最上川を眼下に、窓からは雪化粧した月山も見える絶好のロケーションにある『蕎麦Café 閑や』。建物が隣接していない長閑な立地だが、厳冬でもこの薪ストーブ1台で十分な暖かさを保てているという。

天井が高い店内を暖かく包むのは、日本向けに開発された純ドイツ製の薪ストーブ「アイアンドッグNº07」。販売・設置はdld山形ショールーム。

gatta! 2023年1月号
特集|火のある暮らし。

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